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​​認定特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ

認定特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズは、LGBTQ+が豊かに楽しく歳を重ねていけるような世界をめざし、カフェ、シェアハウス、イベントを実施しています。今回は「グッド・エイジング・エールズ」の代表である松中さんからお話を伺いました。

松中さんがNPO法人を立ち上げ、活動を始めたきっかけを教えてください。

2010年にNPO法人グッド・エイジング・エールズを設立しました(のちに認定NPO法人化)。性のあり方や年齢、国籍、経験さえも越えた、いろいろな個性をもった人たちが心地よく、自分らしく生きられる安心・安全な場所づくりを目指しています。

インドスタディツアー『トビタテ!』出版記念イベント(於:駐日英国大使館)


今思えば、自分の人生を変えるきっかけになったのは、オーストラリアに留学していた時に初めてカミングアウトした経験です。子どもの頃は日本の従来の価値観の根強い北陸地域で育ち、自分のことがまだよくわからないのだと自分の気持ちを否定する時期もありました。体育会系の部活に力を入れ、東京で過ごした学生時代も周りには自分を偽るのが当たり前になっていました。オーストラリアに留学して過ごした約2年間は、自分らしくいられることの心地よさを初めて知ることになり、ありのままの自分を自然に受け入れてくれる社会を経験して、後にNPO法人を立ち上げる源泉になりました。

大手広告会社に勤務している間に、海外研修で半年間米国NYのイベント会社にて勤務し、現地の大手NGOやNPOが主催するイベントに関与し、2013年には米国国務省主催のIVLP(International Visitor Leadership Program)に招聘されて米国5都市を巡り、行政、企業、NPOの参画により社会課題を解決する取り組みを体験する機会を得ました。その中で、常設のLGBTQ+センターを視察し、日本にも安心・安全な場所が必要だと考え、後に渋谷区神宮前二丁目にオープンした「irodori/カラフルステーション」という施設の設立につながりました。バンクーバーの冬季オリンピックのために設置された「プライドハウス」からも影響を受けました。男女に分かれている競技も多く、ファイナル・フロンティアと言われるほど、スポーツ分野におけるLGBTQ+に関する差別・偏見が強いと考えられています。バンクーバーのプライドハウスの立ち上げの思いが受け継がれ、その後、世界各地でプライドハウスが運営されるようになり、東京オリンピック・パラリンピックでもできるのではないかと思えるようになりました。

その頃は、NPOの活動を続けながらも本業として企業に勤めるスタンスは変わりませんでしたが、2016年に一橋大学のアウティング事件が起こり、二足のわらじを履いていた自分にももっとできることがあるのではないかと考えはじめ、翌年2017年7月にNPOの活動に軸足を移しました。

プライドハウスについては、2019年にラグビーワールドカップの日本大会の期間中に「プライドハウス東京2019」を限定的にオープンしました。翌年2020年には、東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会組織委員会が、世界ではじめて公認するプライドハウスとして「プライドハウス東京レガシー」を設立しました。当時パンデミックが始まり、東京大会の開催が危ぶまれる中、LGBTQ+の若年層のコミュニティでは、同居する人(家族など)との生活に安心できない、それなのに、外出自粛を強いられ、場所やつながりを失い、安心・安全な場所がないといった声が高まっていました。そこで、スポンサー企業15社の賛同を得て、翌年に延期されたオリンピック・パラリンピックの大会の開催よりも先に設立することにしました。日本初の常設のLGBTQ+センターとなり、オープンは国際カミングアウトデーに合わせて2020年10月11日にしました。

FITからの寄付金はどのように使用されていますか?

マイノリティの要素が複数ある、複合マイノリティの方々に対する活動分野にFITからの寄付金を使用しています。プライドハウス東京レガシーでは、誰もが安心・安全に過ごせる場所づくりとして、複合マイノリティの皆さんの大変さへの理解の促進を図っています。「ユース・デー」や「トランス・デー」等に加えて毎月第3土曜日に開催している「デフデー」では、ろう者のスタッフに来館者に対応してもらい、日本手話でLGBTQ+に関する情報を得られるインクルーシブな居場所を運営しています。複合マイノリティの視点や課題について可視化させていく活動であり、ろう+LGBTQ+の複合マイノリティの皆さんが、社会を変えていく主体として成功体験を得られる機会になればと思っています。

また、プライドハウスの原点であるスポーツでは、デフリンピックに向けた招致活動が行われていたタイミングから活動を始めて、2025年の東京での開催に向けた機運作りを行っています。新しい言葉は、手話にも常に取り入れていく必要があり、例えばLGBTQ+に関する言葉など、当事者の間で留まりがちですが、手話を第一言語にしている皆さんや手話通訳者に知識を広げていって差別なく、適切に表現できるように支援しています。イベントやワークショップを通して問題を可視化し、周知するような活動を実施しています。NPOの活動に用いる動画に手話やワイプを入れたりする取り組みも始めています。

今後はどのような活動の広がりを考えていますか?

認定NPO法人グッド・エイジング・エールズは、「OUT IN JAPAN」などをはじめとした情報発信の活動を続けます。一方で、プライドハウス東京の活動に関しては、3月末まで認定NPO法人グッド・エイジング・エールズが事務局となり、多様なステークホルダーと様々な取り組みを行ってきましたが、より持続可能な活動としていくために「NPO法人プライドハウス東京」を2023年2月に法人化し、4月1日からは事務局の移管を進めています。代表交代や法人化を通して体制を強化し、大阪、姫路、金沢等、全国の居場所づくりをしている団体とのつながりをつくる取り組みも開始しました。LGBTQ+の当事者に安心・安全で、どなたでも訪れられる社会的な場所と、それを核とした社会課題への変革をもたらす取組みの発信の基地として推進します。

私たちからはどのような支援ができるでしょうか?

様々な人々にプライドハウス東京レガシーに是非一度で良いから足を運んでほしいと思います。週5日開館しており、LGBTQ+の情報発信やホスピタリティの機能が設置されています。多様性に関する様々なイベントやコンテンツを通して理解を深めたり、協賛企業のERGの会合やオンライン会議の発信の場としてご利用いただいたり、様々な活用が可能です。親子でお立ち寄りいただく機会も多く、LGBTQ+に関する絵本もありますし、多数の蔵書があります。研修やトークショー、交流できる機会を提供することに加えて、LGBTQ+の当事者や家族・友人等を対象として相談窓口も運営しています。

2023年10月11日はプライドハウス東京レガシーの設立3周年であり、18日の夕方からは活動報告や交流等が行われる3周年パーティーがTRUNK(HOTEL)にて開催されました。この機会に認知を更に広げ、すべての人が性のあり方によって取り残されることなく、すこやかに、安心して暮らせる社会を目指します。

これまでNPOの活動を続けてきて、困難だったこと、また良かったことは何でしたか?

NPOを本業にして食べていくのはかなり難しいことです。人材もなかなか集まらないかもしれませんし、社会課題の解決を目指す活動には労働や専門性、資金も必要です。とくに私たちの社会課題は「人権」を扱うので、他の分野にはあり得るような対価を得て働けるビジネスモデルにし難いところがありますが、企業や慈善団体、熱量と想いのある人が一緒になって進めていくことで、可視化や自分ごと化ができるようになると信じています。これまで活動を進めてきて、日本の状況も少しずつ変わってきていると実感します。例えば、団体の仲間が活動において以前よりも自分のことを自然体で表現するようになったのを垣間見る機会がありました。カミングアウト自体はマストではないと思うのですが、所属する職場の部署や信頼できる同僚には自分のことをお話している人も以前より増えているようで、セーフゾーンが生活上広がっているのではないかと思われます。社会における課題を解決する取り組みを行っていますが、それと同時に身近な人の変化を知るのはとても感慨深いことです。

キャンプ集合写真松中代表(中央)と[左から]FIT2023実行委員の桐谷、嶋、黄田、山本

​​認定特定非営利活動法人グッド・エイジング・エールズ
https://goodagingyells.net/

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